ひとり経営企画室の調査の基本<統計学と経営のセンス>
定量的なデータを分析する際に
統計学的手法を使うことがあるとお伝えしました。
tanaka-corp-plan.hatenablog.com
二つの集団の平均値に差があるかどうかを調べるときに
よく使われる手法としてt検定があります。
Excelにも関数や分析ツールとして提供されており、
手軽に使うことができます。
このt検定では、グループAとグループBの平均値が
統計学的に見て差がある(有意差がある)かどうかを調べることができます。
具体的には、統計学的に見て、AとBの平均値の差が滅多に起こらないのであれば、
有意差がある、と判断します。滅多に、という部分はなかなか難しいのですが、
一般的には5%未満とか1%未満の確率でしか起きない、という判断になります。
1%未満でしか起きない差なので、差がある、ということですね。
ビジネスの現場であれば、このような使い方です。
対象とする顧客グループAとBで購買金額の平均に差が見られた。
t検定で調べると、この差は1%未満でしか起きない差なので、
確かに差がある(有意差がある)、という使い方ですね。
悩ましいのは、平均に差はあるが、統計学的には差がみられなかったケースです。
例えば、Aの平均が一人2000円で、Bの平均が1000円であった。
しかし、統計学的には有意差はなかった、という場合です。
2倍の差があるので、一般的には狙うべき顧客グループとしてはAになりますが、
本当に差があるかどうかはわからない状況です。
予算的にAとBの両方を追いかけることが難しい状況であれば、
Aを狙うのか、あるいは、別のセグメントを探すのかは、
まさに経営センスによる判断をすることになると思います。
もしかするとサンプル数が増えてくるとAとBに統計的な差がでるかもしれませんし、
逆に、今見えている平均の差がなくなってしまうかもしれません。
どちらになるのかは誰にもわからないでしょう。
そのようなわからない状況でも判断しなければならないのは
勇気がいることですし、経営の醍醐味とも言えるかもしれませんね。
反対に統計学的に差があるが、平均には大きな差がないケースもありえます。
Aの平均が1010円で、Bは1000円といったケースです。
顧客数が非常に大きく、この10円の差が経営上大きな差を生むのであれば
Aを狙うのは意味がでてきます。
しかし、そこまで顧客数がなければ、10円の差は他で吸収できる差と見なして、
他のセグメントを探す、という判断もでてきますね。